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草津病院のNST(栄養サポートチーム)の活動
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当院のNST(栄養サポートチーム)は精神科医師、摂食嚥下障害認定看護師、栄養士、薬剤師、看護師、作業療法士が連携し、それぞれの知識や技術を持ち合い最良の方法で栄養支援を行うチームのことです。その具体的な活動内容について紹介していきます。 |
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☆NSTは栄養サポートチームのかしら文字を取っています。 |
1970年にアメリカで始まったものですが、日本ではすぐには根づきませんでした。日本での活動は1998年藤田保健衛生大学病院 緩和医療科教授 東口高志先生がアメリカでの経験をもとに考案した独自のシステムです。それまでの30年間は日本の医療において栄養というフィールドは抜け落ちていました。適切な栄養管理を行えば、病気の治りも早いうえ院内感染も予防でき、何より患者さんが元気になる。患者さんに最もふさわしい方法で栄養状態を良好に保つことを目的とするチームでその治療成果を発揮したのです。
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☆低栄養患者とは・・・? |
うつ病、認知症の患者さんは食欲不振から長期栄養不良による栄養量不足状態、統合失調症の患者さんは嗜好的な食事に偏り、栄養バランスを崩しやすかったり、アルコール依存症の患者さんはアルコールからのカロリー摂取はあるものの炭水化物、ビタミン、ミネラルが不足する状況が考えられます。栄養状態が悪いと内科的な問題のみならず、精神的にも改善されにくい患者さんもいらっしゃいます。まず精神状態を安定させる治療を行いながら栄養状態の改善とともに治療相乗効果が図れていきます。
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☆草津病院のNSTの役割と目的 |
(1)栄養の評価・判定を行う
(2)適切な栄養管理法の指導・助言を行う
(3)栄養管理に伴う合併症の予防・早期発見と治療を行う
(4)栄養管理の新しい知識の習得と普及活動を行う
(5)栄養管理に係る栄養情報の提供を行う
(6)早期退院や在宅支援を多職種のチームの役割で行う
(7)その他栄養面でのコスト管理
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☆週1回のNST回診によって患者さんの栄養状態を確認 |
当院のNSTメンバーは、精神科医師1名、摂食嚥下障害認定看護師1名、薬剤師1名、作業療法士2名、管理栄養士2名、栄養士1名 各病棟のNSTリンクナース10名からなっています。毎週のNSTラウンドに加え、毎月1回、地域の歯科医師 せと先生が参加して下さり歯科ラウンドを行っています。
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各職種からコメント
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《精神科医師チェアマン:渡邊医師》 |
美味しいと思って口から食べることが出来ると、脳に良い刺激を与え、心身ともに生きる力が出てきます。そうすると、精神状態も安定して更に食べようという気力が出てきます。また、直接口から食事をとることによって、嚥下に関連する筋力も増強し、食事をすることの困難感が軽減し、更に食事をしやすくなります。栄養状態の改善によって薬剤の副作用も出現しにくくなります。また、精神状態が安定すると向精神薬の減量を図れる事もあり、更に嚥下の改善となることもあります。
口から食べると言うことは、まさに正のスパイラルに繋がると言えます。患者さんと病棟スタッフ、調理師、栄養士など多職種と栄養サポートチームで協力して、今後も経口摂取への取り組みを積極的に行い、患者さんの人間としての尊厳を大切にして、生きる喜びを味わっていただけるようにNST活動を行って行きたいと思っています。 |
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《摂食嚥下障害認定看護師》 |
食事をおいしく安全に食べて頂くとういう事は、人としての尊厳を守ることにつながります。そんな言葉を毎日の食事の支援のなかで感じます。摂食嚥下認定看護師の役割は、飲み込みの状態に合わせた食事を提供すること、また、安全に食べることが出来ない方に対し訓練やケアの相談、指導、実践を行います。精神科においては、口腔機能や摂食嚥下機能は薬の副作用のみでなく、加齢の影響や精神状態、身体状態に大きく影響します。美味しく安全に食べて頂くためにはそれぞれの専門性をもったスタッフの介入が必要です。NST活動の中で安全に食べて頂くには@精神状態や身体状態の改善A口腔ケアB飲み込みにあった食事の提案C安全に食べて頂くための姿勢の調整が必要です。今後とも、多職種と連携し一口でも安全に美味しく食べて頂けるように支援していきたいと思います。 |
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《薬剤師》 |
NSTにおいて薬剤師は、栄養療法における医薬品の適正使用推進、静脈・経腸栄養療法における処方支援や情報提供、病棟担当の薬剤師と栄養管理の連携支援を行なっています。また精神科では、症状による食事量低下の他に、お薬の影響を考慮することが必要不可欠となります。精神科の薬物治療には、向精神薬が多く使われますが、この向精神薬は時に食欲や食べる動作に影響を与えることがあるのです。薬学的視点から栄養状態の改善に取り組む支援を行っています。 |
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《作業療法士》 |
食事を美味しく食べられることは、患者さんの生活の質の向上に繋がります。作業療法士からは主に食事場面での姿勢や環境に対してアプローチをします。上肢や姿勢のコントロールに必要とされる身体・精神機能の評価や、自助具や食事環境の調整など様々な視点からのアプローチを心がけています。これからも毎日の訓練から食事をすることの困難感が軽減し、食事を楽しんで頂けるように訓練も合わせて支援していきます。 |
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《管理栄養士・栄養士》 |
多職種と協力して食事を少しでも召し上がれるようになった患者さんの喜びを一緒に感じながら日々の食事の支援、栄養教育、家族指導などを行っています。紙面の栄養献立より美味しい食事の中で栄養バランスを工夫できるように調理師とも協同して毎日の食事を提供しています。これから在宅へ戻られる方へのワンポイント栄養指導のニーズも高まり、訪問看護や梅の里、DC通所などいろんな場面で食事支援を行っています。 |
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≪NST稼働認定施設≫ |
TNTドクター、摂食嚥下障害認定看護師、NST専門療法士、管理栄養士、薬剤師、看護師、作業療法士が、患者様の生活支援が行えるように食事の支援を行っています。毎週曜日を決めて、病棟回診を行っています2012年4月にNST稼働施設の認定を受けています。 |
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≪摂食嚥下障害認定看護師教育課程の認定施設≫ |
日本赤十字広島看護大学認定看護師教育課程「摂食・嚥下障害」研修生2名が2015年10月13日〜11月12日までの約1カ月間、当院で臨地実習されました。認定看護師として認定課程の中で学んだ実践、指導、相談等に必要な知識や技術を認知症治療病棟のなかで活用し実習に取り組まれました。摂食嚥下障害看護は摂食嚥下機能だけでなく、病態や疾患の回復過程の理解、栄養状態、口腔内の状況、活動性、薬の副作用、退院支援に必要な今後の方針など多くの課題を情報提供しながら多職種と連携し全人的な患者理解が必要です。実習生は「口から食べる喜び」「食べることをあきらめない看護」を実践することの大切さを病棟スタッフと主に体験し、多職種の連携により精神科ならでの専門的知識を学ぶことができました。ご協力いただきました認知症治療病棟のスタッフの皆様、医師を始めとするコメディカルの皆様ありがとうございました。
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摂食嚥下障害看護認定看護師 中村清子 |
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広島県では、広島大学病院、広島県立病院、広島市立病院、広島安芸病院など認定施設病院です。 |
全国では、精神科病院ではじめての施設認定となります。
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